宙組公演『白昼の稲妻』『テンプテーション』観劇。
恒例になり果てている伊藤園貸切。司会のにーちゃんのテンションも健在、つーかこの人、毎年レベルアップしてるよね?
今後の資料のために書いておこう、今年の手みやげは、「250ml紙パックのお~いお茶」「250ml紙パック任意のお茶(人によってチガウ。わたしは金の烏龍茶だった)」「新製品・サロンドカフェ、デミタス・ブレンド・カフェオレの3本セット(缶なのでめちゃ重い)」だった。
やっぱ最初の年の「贈答用・箱入りティーバッグセット」にかなうモノはないな。
応募は6万通ほどあったそうで、わたしは8通送って1つ当たった。
わたしが体調不良で死んでいる間にWHITEちゃんが抽選、見事3列目センター近くを当ててくれた。ありがとうありがとう。
おかげで、次は後方席から全体を見たいな、と思うくらい堪能させてもらった。
柴田侑宏作、荻田浩一演出、『白昼の稲妻』。
タイトルだけ見ると「なんじゃそりゃ?」と引いてしまうが、19世紀前半のパリが舞台の恋愛サスペンスだ。タイトルからはとても内容が想像できない。『ガラスの風景』もそうだったから、柴田先生のブームかもしれない。
アルベール@たかこはパリで、昔好きだった女の子、ヴィヴィアンヌ@お花様に再会した。8年前(だったっけ?)彼女は身内の不幸&政変のごたごたで、外国へ亡命してしまっていたんだ。
やったぜ、あきらめていた恋よ、もう一度! アルベールはひとりで盛り上がるが、ヴィヴィアンヌは今ひとつ煮え切らない。彼女もアルベールに気がありそうなんだけど、「それどころじゃないの!」とこれまたひとりでテンパっている。
ヴィヴィアンヌにはなにか、秘密があるようだ。恋する男はストーキングで秘密を探る。
なんと、ヴィヴィアンヌは8年前に死んだ家族の仇を捜していたのだ。彼女の家族の立て続けの死は、政敵ランブルーズ侯爵@水しぇんの陰謀だったのだ! そりゃー、のんきにたかこ……ぢゃねえ、アルベールと恋愛なんかしてらんないわ。
アルベールは彼女に協力を申し出る。つーか、ちゃっかり愛を告白する。君の敵はボクの敵、ふたりで悪党をやっつけよう! それも、殺人なんて手段は使わない。アルベールは詩人で劇作家だ、自分たちの劇団で告発劇を上演するんだ、これは正義の聖戦だ!
しかし、侯爵側がアルベールたちの動きに気づいた模様。重ねられる妨害工作。
さあ、舞台の幕は無事に上がるのか?
おどろいたこと。
1・お花様の年齢。……10代? ものすっげー若い役作り。柴田先生、この期に及んでお花様に少女役をやらせますか……びっくりだ。
2・水くんのヒゲ。……かっこいい。かっこいいよー。うきゃ~~っ。
3・柴田作品と荻田演出の乖離感。……ここまで別モノでいいの?
えーっと、前半はかなり眠いです。
どうしたもんかね、これは。仕方ないことなんだけど、状況説明のためにかなりの時間を割いてある。
物語が動き出すのは、ヴィヴィアンヌの敵がわかってからだ。
そっから先は小気味よく展開するんだけどなあ。ダメな人は、前半で爆睡してるかも。
後半が何故盛り上がるのか。ストーリーが動くから、というのはたしかにある。だがそれ以上に。
オギーが全開になるんだ。
ルネ@アリスちゃんがどうこう(一応伏せてみる)、てなシーンあたりから、オギー、エンジンかかってます。
そして、劇中劇『オセロー』。
これ、すごい。
オギー全開。
ここはすでに柴田作品じゃない。
荻田浩一作品。
やばいよやばいよ、大劇でやっていいの? 表現していいの?
嫉妬、憎悪、破壊。
オギー版『オセロー』。
愛、怒り、慟哭。
美しくも恐ろしい精神世界がそこに。
とりあえず。
オギーファンは、この劇中劇のためだけに、行け。
その目でその魂で、見ておけ。
あとは寝ていてもいいから。
てなシーンです。はい。
あまりに劇中劇がものすごかったので、そのあとのシーンのしょぼさに盛大に拍子抜けしたよ。
へ?
終わり?
ハッピーエンドですか、へー、そーなんだー。頭ぽりぽり。
幕が下りたときには、すでになにを観に来たのか、わからなかった。
えっとぉ、オギーのショーを観たんだっけか。あっ、チガウ、柴田原作の芝居を観たんだった、忘れてた。でも、どんな話だったっけ??
オギーと波長の合う人には、やばいくらい劇中劇と、他のストーリー部分が乖離してます。
まったく別物。浮きまくり。
ねえコレ、いいの?
オギーやりすぎなんじゃない? わたしはたのしかったからいいけど、1本の作品としてはバランス悪すぎるよ?
トイレの列に並んでいるときの、周囲の人たちの会話。
「ねえ、今のお芝居わかった?」
「さあぁ? なんか、難しかったわねえ」
「前の雪組の方がよかったわ、『Romance de Paris』。『ローマの休日』みたいで」
「あたしはアレの方がよかったわ。『望郷は海を越えて』」
体調が悪いことも相まって、膝が砕けそうになったよ。『望郷』以下だってさ、そりゃすげえや。
ミステリでいうならば、名探偵が皆を集めて謎解きする、いちばんの盛り上がり部分を、「オギー全開のショー」で表現しちゃったんだもん。
わかんない人には、本気でわかんないと思うぞ?
いいのか、それ?
バウならともかく、大劇だぞ?
ふつうに「タカラヅカ」である柴田部分と、感性暴走のオギー部分。ひとつの作品が、ここまでぱっきり分かれているってのは、どうよ?
いっそのこと、バウでオギー単独作品として、『オセロー』原作のオリジナルを上演してくれ。
まな板に載る素材のひとつは「嫉妬」。
…………想像しただけで背筋が凍るよーな作品が、できるはずだ。
オギーがあまりにぶっちぎりで暴走してくれたもんで、そのあとのショー『テンプテーション』はほんとーに印象がない。
『レ・コラージュ』と入れ替わっていても、わたしは気づかないだろーなー、てなレベルのショーだった。
あ、銀橋からオカマ@タニちゃんが登場したっけ。それとも山本リンダのコスプレかな。
オカマなだけに、あの大きなおっぱいが本物なのかニセ乳なのかが気になった。
いやあ、タニちゃん顔はかわいいけど、女にしたらでかいよ。でもたかこはそんなタニを、ごくふつーに抱きしめていて……そっか、たかこはそれ以上にでかいのか……すげえな。と、今さら感心する。
芝居のときは、タニちゃんの歌は気にならなかった。水しぇんの歌には椅子から転げ落ちそうになったが。
しかし、ショーになるとタニちゃんの破壊力が健在であることを思い知らされた。ははは。そーよね、音痴でこそタニちゃんよね。
やたらめったら長かったヴェトナム恋物語。
若いころの恋の思い出(男@たかこ、女@お花様)を美しく長々とやったあげく、初恋の人と再会? てなシーンで終わるんだが。
その、せっかくの再会がものすげえしょぼいのは何故?
男の方は色男で裕福そうで、人生余裕ありまくり、今も若くてバリバリです、って感じなのに。
再会したかつての恋人が、生活に疲れた中年おばさん、てのはどうよ?
ええっ、この小汚いおばさんがかつての俺の恋人?! がーーーーーん……っ。
で、暗転END、次のお話へ。
……ってソレ、タカラヅカ的にいいの?
え? わたしにはあのお花様はダサい中年のおばさんに見えたけど、チガウの? 貧しく花を売って暮らしている、苦労でトシよりずっと老けてしまったことを表現しているんだと思ったけど?
ひょっとしてアレ、「美しい再会」だったの??
あと、期待通りものすごかったロケットのセンター。
わたしが暁郷に悩殺されて吹き出している横で、同じようにWHITEちゃんが吹き出していた。そうか、君もあの笑顔にクラクラか。
わたしが唯一実際に観ることのできた音楽学校文化祭で、心から「男役としてはいいけど、女として生きていくのは大変だろうな」と思ったルックスの彼。レオタード姿が、そりゃーもー、すごかったさ……。
強く生きてくれ暁郷。大きく羽ばたいてくれ暁郷。赤いスーツの正義の味方に変身しそうな芸名ごと、応援しているぞ。
「片桐はいりに似ている……」
なんて言っていたことはないしょだぞ暁郷。
芝居も書いたから、ショーの方も書いておこう。
おどろいたこと。
1・組長の踊る位置。
2・組長の歌う位置。
3・組長のパレードの歌手。
組長、かなみちゃんと対の娘役なんですね。W2番手娘役。だから、エトワール@かなみのあとに、エトワールその2として、大階段のセンターをピンライトを浴びてひとりで歌いながら降りてくるんですね。
このW2番手娘役をなんとかしないと、宙組の未来は暗いと思うんだけどどうよ?
ショーではひたすら右京くんを見てました……たかちゃんでも水くんでもなく。
だって真ん中の人はどんな席でも見えるけど、右京くんは良席でないと見えないもん(笑)。
ほんとに彼の顔は好みだ。
とりあえず、オギーの『オセロー』がもう一度観たいから、また観に行くかな。
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思い出したことがある。
わたし、リカちゃんダメだったんだ。
長い間、紫吹淳が苦手だった。
大劇ならともかく、リカちゃんが主演しているバウその他の公演は、スルーしていた。
いやあ、忘れてたよ。
わたし、リカちゃんダメだったんだー。
と、突然観に行ったリカコンで思い出したの。今回のコンサートは、なつかしい曲とかも使っているから。
そーいやわたし、昔はリカちゃん苦手だったんだ。この曲のときとか、この曲のときとか! ああ、記憶がよみがえる。
かねすきさんが観に来るっていうから、それならわたしもかねすきさんに会いがてら観に行くかな、と、突然行くことにした『Lica-Rika/L.R.』。
前にあったリカコンで、2列目センター席でいたたまれない思いをしたのを思い出して、後方席をGET。バウホールは6列目まで段差なしだからねえ。スタンディングのとき、後ろの席の人に恨まれたと思うんだよなー。だってわたし、周囲の人(男性含む)よりアタマひとつでかかったから。
実際、今回後方席から客席を眺め、自分の判断にまちがいがなかったことを実感したよ。
前方席の人たちのノリの、真似はできませんわたし……。ばばあだからさ……。1列目を早々に手放しておいてよかった。やっぱ最前列はファンのための席だ~。
わたしが紫吹淳を個別認識したのは、『ベイシティ・ブルース』のときだ。
出番は少なかったが、印象は強烈だった。うわーっ、かっこいー、きれいー、かわいー。
それ以降花組を観るときは、リカちゃんを探すようになった。
が。
いつのころからか、苦手な人に。
あんなにきれいだったのに……何故。
リカちゃんってほんと、時期によって顔がぜんぜん変わっちゃう人だったよねえ?
わたしにとって、苦手な顔と芸風になってしまわれたのだ……涙。
苦手だから、近寄らないようにしていたのに。
でもでも、無視できない人だった。
苦手~、でも気になる~~。
てなことをやってるうちに、やっぱり「気になる」が勝ち、「やっぱり好き~」に着地した。
複雑だわ。
「リカちゃんだから観ない」だったはずなのに、いつの間にやら「リカちゃんだから観とくか」になった。
紫吹淳の勝ち、緑野の負け。
でも、こーゆーことって、けっこうある。
苦手だった人が、いつの間にか好きな人に。
あら、ハーレクインの定番?
カリンチョさんもミユさんもゆうこ姫も、みんな最初はダメだったんだ。なのにあとになって大好きになった。
苦手、てのはそれだけ影響力があるってこと。わたしのセンサーに引っかかるってこと。目にも入らない、記憶にも残らない人より、ずっとずっと、すごい人。
だから、おもしろいんだよね。
ダメだった人を好きになる、それって人生の醍醐味、お得感。
てなわけで、昔ダメだったことなんか、すっかり忘却していたリカちゃんのコンサート。
たのしんできました。
スライド上映がないって、いいなあ(笑)。
前回のコンサートがさあ、内輪受けのスライド上映会つきだったからさー。アレ、またやられたらつらいなと思ってたんだ。なくてよかったよ。
コンサートというより、ふつーにショーの2本立て(休憩はさんでるから)。
人数が少ないだけの、いつものヅカのショー。男役トップスターがいて、娘役トップスターがいて。
ふつーにたのしく、ふつーに終わった。
特別なことは、ナニもナシ。
前のリカコンの方が、冒険的でファンサービス的だった気は、大いにする。バウホールとドラマシティの差かな。内輪受けで終始していいハコと、ある程度外に開かれたハコの差? それとも大きさの差?
トップ娘役がいたことも、大きいかな。「相手役」がきちんといるので、さらに「いつも感」が増した。
前のコンサートは、トップ娘役もリカちゃんがひとりでつとめていた印象だからなあ(笑)。
ところで、かねすきさん。
娘役さんたちのナマ腹に、いたく感動していたようですが。
エミクラちゃんの「くらり~ん、フラッシュ!!」に言及しておりましたが。
「だって、演出斎藤くんだもん」
とわたしが言うと、
「そうか、斎藤か。斎藤ならわかるわ」
って、すんなり納得。
ええっ、それだけで納得しちゃうんですか?! 斎藤くんって?!
いやあ、なんといってもゆらさんのナマ腹ですよ……。
わたしと同い年なのに……あの筋肉質なカラダはなにごと?! 自分のたるみきった腹がかなしいです。
だけど、腹の筋肉でいえば、その昔見た星奈優里ちゃんの腹にかなうものはありません。シックス・ブロックがびしっと刻まれた腹だった……顔はお姫様なのに……腹には少年ジャンプのよーな筋肉……。
たのしむ気満々で行ったのに、またしても体調不良ゆえ、2部でスタンディングできなかったのが残念ナリ。貧血起こして座席に埋まってた……。通路際だったから、坐っててもセンターは見えたんで助かったけど。
かねすきさん、お菓子ありがとー。おかげで一時的にだけど血糖値を上げて、自分で歩くことができたよ。
かねすきさんはその足で、神戸の樹里コンに旅立ちました。コンサート2本立て……。いいなあ、樹里コンも行きたかったよ。でも、樹里コンは高いから、今のわたしにはちょっとな……(って、リカコンがいくらだったかはないしょ・笑)。
まあ、今日は体力的に無理だったけどな。
たのしかったけどリカコン……「いつものショー」ではなく、どっぷりダークで耽美で妖しいマニアックなショーを見てみたかった気がする……。せっかくリカちゃんなんだから……。
「太陽の塔内部公開」に行けなかった……。
ものすごーく、引きずってます。
特別に思い入れがあるもので。
ので、かなしく花組全ツ初日に行ってきました。
太陽の塔に行ければ、こっちはさばくつもりだったんだが……。
デイジーちゃん、華麗なる復活!!
わたしの友人ズのなかで、もっとも高いテンションを誇るデイジーちゃん。暴走するとぶつかっても止まらないデイジーちゃん。
最近おとなしかった彼女が、花全ツ初日を観終わるなり、完全復活しました。
こわいよ、なにか出てるよ!(笑)
彼女の周りに、ピンクのお花が飛んでいるのが見えます。
「たのしかった! 全ツの回数、増やします!!」
花組東宝が終わってから、ひと月ほどですか?
オサ命の彼女は禁断症状が出ていた模様。ナマの寿美礼サマをその目にして、エンジンがかかったようです。てゆーか、走り出した瞬間にトップスピードにのってます。
おーい、デイジーちゃん、大丈夫かぁ? 舞い上がった足が、地面についてないよー?
とまあ、デイジーちゃんは極端だけど、たのしい舞台でした。ショーは。
芝居?
芝居は……わたしには、わりときつかったっす、『琥珀色の雨にぬれて』。
「人材不足」という文字が、アタマを占領して離れなかったよ。
まず、ヒロイン。
これが絶世の美女か……溜息。誰もを虜にする魅力を持つ女か……溜息。
それから、伊達男。
これが百戦錬磨のジゴロか……溜息。誰をも虜にする魅力を持つ男か……溜息。
寿美礼ちゃんひとりが必死になって「主役」をやっていたよーな。
舞台をたったひとりで埋めようとしていたよーな。
ヒロインと2番手が力不足だと、あーゆーことになるのか、と、全国ツアーの穴を目の当たりにした気分。
いや、らんとむはなー、そもそも4番手なんだから仕方ないっちゃー仕方ないんだが。4番手の坊やにいきなり2番手やらせる方が悪いのかもしれん。
それにらんとむ、芸風変わっちゃったからねえ。『エンタの神様』以降アイドル化しちゃって、昔の「イケてないけど実力派」だった頃とは別人だからねえ。昔のままなら、もっとチガウ役を作れたんじゃないかと思う。『マノン』のころはよかったよ……遠い目。
小僧でしかないらんとむは置いておいて、ヒロインはどうよ?
仮にもトップ娘役サマなのになー。
これからあか抜けていくのかしら。
そして、ショー『Cocktail』。
わたしはコレ、チャー様Ver.しか知らないんだよねー。
ムラで観たとき、寿美礼ちゃんの短パン姿に目眩がしたこととか(なんて格好させんのよ! 怒)、チャー様の歌うすさまじいJ-POPに椅子から落ちそうになったことぐらいしか、記憶にないのだわ。あ、あとオカマが絡み合うシーンがあったっけ?
よくおぼえていないことが幸いしたのかどうか、とにかくやたらたのしかった。
『Cocktail』ってこんなショーだっけ? 印象がぜんぜんチガウ。
つーか、すごくたのしかった。
めちゃかっこいいんですけど、みなさん!!
たぶん、新しいシーンだと思うんだけど、あの振り付けは癖になる~。
ショーが終わったあと、トイレの列に並んでるとき、見知らぬおばさまがその振り付けで踊っていらっしゃいました……。
一緒になって笑っちゃったけど、わかる、気持ちはわかるよ! アレは踊りたくなるよねえ?
デイジーちゃんに「コレを踊ってる人を見たよ」と実際にわたしもやってみたら、彼女も「ああ!」って納得してるし。
プログラム買ってないんで、どこのシーンと名指しはできません……。昔なんかのショーであったんですか? 紳士と淑女の群舞。ひたすらかっこいい……。
寿美礼ちゃんのファンは、心からたのしめますわ……ああ、うっとり。
黒燕尾が美しい人ですね、ほんとに。
たったひとり立つことで、舞台の空間を埋められる人。
そしてなんといっても、あの歌声。
声が好きなんだよなー。とくに、ドスのきいた低い声は最高に好き。
にこにこ笑っているときは「腹の底まで真っ白です!」という善良な青年に見えるし、ほんのちょっと表情をゆがめるだけで「魂の底まで邪悪です」って男に見える。
それがオサ様の魅力。
ショーでは両方をたのしめるからいいんだよなー。
ほらあの、オカマが絡み合うシーン。ここは健在なのね。
チャー様のときはオカマに見えてしまったんだが(チャー様が女性っぽく演じていたからだと思う)、寿美礼ちゃんだとトート様に見えて、
「あら、トート様が新公ルドルフ@みわっちを誘惑しているわ」
と、素直に愉しんでしまった……。邪悪なカオが似合うよなー、寿美礼ちゃん。あ、でもみわっちは受々しすぎていて、わたし的にはNG(笑)。
このショーを観ながらつくづく思ったのは、
「歌えるってことは、強みだ」
ということ。
だって……。
まっつ!!
まっつが、すごかったよー。
アンタ、どこのスター様ですか!
ひょっとしてショーでは2番手ですか? ってくらい、歌のシーンになると場をかっさらっていくんですが。
おどろいたわ。
ムラ公演のとき、ちはる兄貴が歌っていた曲を、歌っちゃうなんて。つーかあのキー出しちゃうんですか、小僧っ子のくせに! カオなんかガキ丸出しなのに。
歌えるってのは、強いなあ。
若手の路線系で歌うまい子ってのは、貴重だもんな。このまま育ってくれえ。
お化粧から立ち居振る舞いからキザり方から、オサ様のコピーみたいな彼は、これからどんな大人の男になるのでしょう。たのしみです。
そーいやわたしが彼を個別認識したのが、ムラの『琥珀…』でしたっけなあ。月日の経つのは早いなあ。
歌手であるオサ様とまっつの間に挟まれて、とっても割を食っていたのがらんとむ……。
普段は、あそこまで彼の歌を「ひどい」とは思わないんだがな。
今回は、彼が歌うたびに「あちゃ」と思った……。
へんだなあ、らんとむは十分歌うまいと思ってるんだけど……つーかヘタだなんて一度も思ったことないんだけど……今回はソロの多さも災いして、「あちゃ」の連続だった。わたし的に。
最近、ショー作品でたのしい思いをしたことがなかっただけに、意外なほどたのしかった。
人手不足だから、いろんな人が意外な衣装でスターみたいなカオで踊ってるけど、内容はよかったよ。本公演の規模とキャストで観たいくらいだ。
芝居のときは冷静だったのに、ショーが終わるなり、わたしとデイジーちゃんは大喜びさ。
デイジーちゃんは、結局夕方の公演も、さばきで観ることにしていたし。
あ、さばきは適度にありました。本気になればいくらでも良席を探せたと思うよ。デイジーちゃんはF席センターGETして踊りながら劇場に入っていったもん(笑)。
ところで、この春野寿美礼サマの出演番組の放送が延期され抗議殺到、っていう恥ずかしいニュースがありましたね。
その番組が本日よーやく放送だってんで、デイジーちゃんに話題を振りましたですよ。
すると彼女、
「ええ、あたしもNHKに電話しましたけどね」
と、めちゃ素で言うのよ。
電話って、抗議電話? ニュースになった、あの?
「それって、誰かに号令されたとか?」
とわたしが聞いたのは、組織で抗議活動とかがあったのかなと思ったから。
だって、そんなことでもない限り、ニュースになるほどの抗議が殺到するわけないと思って。
少なくともわたしは、たのしみにしていた番組が延期されたからって、テレビ局に抗議をしようなんて考えたことは生涯一度もない。仲間に愚痴たれるぐらいはするだろーけどさー。クレームをつけるなんて……。
「いいえ? わたしは自分の意志でかけましたけど? だって、ムカついたんだもん!」
心底不思議そうに、返されちゃったよ……。
そうか、これがほんとうのファンだ!
「もっとも、ずーーーーっと話し中で、つながらなかったんですけどね!」
ってアンタ、どれくらいリダイアルしたのよ?(こわくて聞けなかった)
春野寿美礼が今アツいのが、よくわかった。
デイジーちゃんみたいなファンが、あったりまえにいっぱいいるんだ。
電話が通じないくらい、いっぱいいるんだ。
そりゃ、ニュースにもなるわ……。
夕方の公演を観たWHITEちゃんからも、デイジーちゃんのテンションにおびえたメールが届いた。
F席のデイジーちゃんは、さらにパワーアップしていた模様(笑)。
「太陽の塔内部公開」に行けなかった……。
ものすごーく、引きずってます。
特別に思い入れがあるもので。
ので、かなしく花組全ツ2日目に行ってきました。
太陽の塔に行ければ、こっちはさばくつもりだったんだが……。
と、昨日と同じイントロで失礼。
でもこれがほんとのとこだもん……。
さて、寿美礼ちゃん素敵~~、萌え~~、だけではなんなので、他の話。
柴田侑宏作、正塚晴彦演出『琥珀色の雨にぬれて』。
純真青年クロード@オサは、美女シャロン@ふーちゃんに一目惚れ。シャロンは大金持ちのおっさんたちを手玉に取る魔性の女。誰のモノにもならない、高嶺の花。それでもクロードはめげずに恋一直線。シャロンを狙うジゴロのルイ@蘭とむとライバル宣言をしてみたり、とってもフェア。シャロンもそんなクロードの好青年ぶりにぐらりときたみたいだけど、彼にはフィアンセのフランソワーズ@あすかがいて……。
四角関係恋愛ドラマ。
この作品ってさ……。
ストーリーではなく、キャラものだと思うの。
ストーリー展開なんかどーでもいいのよ、キャラが魅力的ならば!
という、マンガやライトノベルのノリの作品だと思うの。
柴田作品というと「大人」で、シックで洗練されていて、ガキが観てもわかんないのよ!的なイメージがあるけどさ。
『琥珀…』はキャラものでしょ?
主人公クロード。
この男が、すべてのはじまり。つーか、全部。
だってこのクロードってさ、早い話が登場人物全員に「一目で愛される」キャラなのよ。
そこにいるだけで、すべて許されてしまう存在。
誰もが、出会った瞬間から彼に好意を持ち、彼を受け入れる。
彼がなにをしようと関係ない。
クロードが世界から愛される、それがこの物語。
これは、前提。
絶対条件。
舞台上だけでなく、観客に対してもそうでなければならない。
出てきた瞬間に客席全部を虜にして、自分に感情移入させてしまわなければならない。
だからこの役は、正しくトップスターの役だと思う。
世界から愛される。
彼の目線で、世界が動く。
観客はすべて、彼の味方。
彼が物語の中で取る行動はけっこうひどいんだが(二股、浮気、裏切り)、それを一切不問にして彼に同調させるだけの「魅力」を第一に求められるわけ。
台詞で「純真だ」てなことを解説されるだけで、彼がすばらしい人だというエピソードは特にないのに、「すばらしい人」だと最初から思わせなければならない。
この極端な主人公が、これまた極端な「美女」に一目惚れをする。
クロードがここまで「特別」な存在だから、そんな彼に一目で愛される女は、さらに特別でなければならない。
ヒロイン、シャロン。
絵のモデルやマヌカンをやっている、とはいっても、やっぱりイメージ的には高級娼婦。パトロン持ちの魔性の美女。
誰もが彼女に夢中にならざるを得ないほどの、魅力の持ち主。
……これもまた、役者の力を測られてしまう役。出てきた瞬間に万人を魅了する「華」がなくては成り立たない。
清純な青年と、魔性の女の恋。
ふたりはあまりにもチガウから、惹かれ合ったのだと、説明はつく。
つくけど、ストーリーよりはキャラ重視の展開。このキャラならば、こうでしょう!的。
物語はなにもかも、キャラのお約束だけで終始する。
純真青年主人公ならこう、魔性の女ならこう、清純な令嬢ならばこう、伊達男ならこう、といった形通りの行動とオチ。
キャラだけで、ストーリーは言い訳程度だからさー。
ベストキャスティングで観たいよ。
つーかそうでないと、退屈なだけだよ、この芝居。
最初にムラで観たときは、ほんとによくわからなかった。
主人公クロードという人物が。
ストーリーが言い訳程度だから、キャラがわからないと、マジでわけわかんなくなるんだよね。
何故この人はここでこう言うんだろう、ここでこう行動するんだろう?
?マークだらけ。
理解したのは、新公でだ。
……チャー様のクロードは、わたしには理解不能だったんだよ。きれいだったけど。
新人公演は、正直期待してなかった。
だって当時らんとむくんといえば、どすこい健康優良児、イケてない実力派。
うまいのはわかってるけど、タイプってものがあるじゃん。あの体育会系の元気な男の子が、どーやってこんな悲恋モノの貴公子を演じるんだ……と、危惧していた。
しかし。
フタを開けてみれば、全部杞憂。
わたしにとって、クロード役はらんとむの方が合っていた。つーか、はじめて理解できた。
そっか、こーゆー人だったんだ……。
理解できなかった台詞も行動も、はじめて意味がわかったよ……。
クロードの真面目さや不器用さ、誠実さが、ストレートに伝わってきたんだ。
この男ならたしかに、あーゆーことになるか……納得。
見た目はもちろん、チャー様の方がよかったんだけどね。神経質な美青年で。
らんとむくんは正直見た目はちょっと……ごつすぎ。でもその体育会系なところが、真っ正直さを後押ししていた気もする。
難しい役だ、クロード。
一見、ただの二枚目だけどね。
世界から愛される人間、なんて、究極の難役だと思う。
谷作品みたいに、全員が主役万歳して彼のために死んでいく、みたいな話にでもしないと、わからないって(谷作品はそれでもわからないが)。
今回のオサのクロードを観て、さらに難しさを再確認した。
あたりまえだが、チャー様ともらんとむくんとも別人のクロードがそこにいた。
オサクロードは純真さより真面目さより、「華」だけで勝負している気がしたよ。
こんな男、好きでしょ?
ほーら純真だよ、かわいいよ、きれいだよ、どう?
「俺を好きになれ!」と、全開で言われている気がした……。
え、えーと……。
わたしはもともとアナタが好きだからいいけど、そーでない場合はどうなんでしょ?
その潔い「華」勝負っぷりは。
クロードの純真さもかわいさも真面目さも誠実さも、全部「華」のあとからついてくる、てか?
その役作りは、正しいのか? タカラヅカのトップスターとしては、正解ど真ん中か?
ま、ファンの目は曇っているだろーから、あくまでもわたしの感想にすぎませんがな。
そして、ヒロイン、シャロンが難しいのは言うまでもなく(語る気ナシ)。
恋敵のジゴロ、ルイもまた、難しすぎる。
はっきりいってこの男、いなくてもいいもんなあ。
三角関係てのは、恋敵が同等かそれ以上の位置にいないと盛り上がらない。
同等ってのは、立場だったり気持ちだったりするわけだけど。
ルイって、すべて同等以下なんだよね。
シャロンは金のかかる女だから、彼女を得るためには金が必要。もしくは、地位や名誉。彼女のパトロンたちにはそれがあるし、クロードだって貴族で青年実業家だ。
なのにルイはただのジゴロ。美貌と才能と野心しかない。
ルイが金持ちのボンなら、クロードのライバルになり得る。地位も名誉もあります、てな男なら。
なにも持っていない男が何故、クロードのライバルなの?
関係ないじゃん。ルイはただの、シャロンに懸想しているその他大勢のひとりじゃん。
自力で成り上がってきた者同士だからこそ、シャロンと解り合える、と彼は言うが、これがまたおかしい。野心家ならばこそ、なんの権力もない男にシャロンがなびかないのはわかっているだろうに。
あとライバルになり得る要因は、クロードの「親友」という設定だな。いくらルイがなにも持たない若者でも、クロードの親友ならば、それは十分「同等」になる。親友と同じ女を愛したのなら、悩みもするだろうし、フェアを宣言したりもするだろうよ。
初対面のジゴロを相手に、いきなりライバル宣言してフェアプレイを誓うなんて、クロード変過ぎ。
いなくてもいい、立場的にも変、な役だからこそ、すごーく難しい。ルイというキャラクター。
未だにこの役を「モノにした」という人を見ていません。寿美礼ちゃんもまっつもらんとむも「チガウ」としか言えない。
つーか、もともと変な役だもんな……誰がやっても限界があるんじゃ?
ルイはクロードに一目惚れして、彼に近づくためにシャロンを好きなふりをした、としか思えないんだもんよ……。
でないと彼の行動は理解できない。
フランソワーズの難しさは、立場が悪役だから。
女が嫌うタイプの女だから、この役を嫌味にならず「わかるわ。仕方なかったのよね」と観客の同情を引くよーに演じるのは、かなり難しいと思う。
純真な少女にするのがポイントだと思うけどな。計算高い女、になったら最後だから。
可憐、ってイメージの子がやるとハマるだろうね。あすかちゃんはそれとは反対の持ち味がある子だから、難しいだろーなー。悪くはないと思ってるけど、ベストかというと疑問符付きだ。
キャラものだからこそ、ベストキャスティングで観たい。
ハマったときはきっと、おもしろくなるんだろうな。
てゆーか。
そこまで難しい、ストーリー性に乏しいものを、あえて何度も再演してくれなくていいんだけど。
大忙し、ミナミで『キル・ビル』を見たあとは、ムラでお茶会だっ。
名前を言っても「誰ソレ?」と真顔で返される某タカラジェンヌのお茶会に行って来ました。
いいんだ、人気も知名度もなくったって。わたしは好きなんだからっ。
お茶会に行くことがほとんどないこのわたし、路線外中堅?まだ若手か?男役のお茶会というものがどんなもんか、さっぱりわからないまま行きました。
……アットホームですね……。
たのしかったです。
つーか、距離が近すぎて落ち着かないとゆーかね……彼の黒いコートに猫の毛がついていたら、それはわたしのせいです。(注・わたしが語る際、男役の三人称はすべて「彼」です)
積極的参加のわたしとデイジーちゃん、そして欠員の穴埋めで動員されたWHITEちゃんの3人で出席。3人とも同じテーブルでした。
ちなみに、この日のわたしのこだわりは、
「ヒールのある靴を履かない」
でした。
だってさ、その日のダーリンより背が高かったらイヤじゃん。ヲトメゴコロが傷つくじゃん。
「大丈夫ですよ、彼の公称身長は170cmですから」
と、同じテーブルのお嬢さん。
わたしの公称身長は168cmだから、ヒールを履いたらやばかったな。わたしは溜息。
「公称? というと、実際は?」
お嬢さんにそう返されたが、ノーコメントだ、そんなもん。
とにかく、ペタンコ靴を履いてきてよかった。
「初恋の男の子より背が高かったというトラウマのある身では、いろいろと気になるものなのさ」
というわたしの台詞で、どーして吹き出したの、WHITEちゃん。ねえ、君、なにか言いたいことがあったのかい?
さて、そのお茶会のトークで。
「思い込んだら一直線なんです」
と、彼は言う。
どっかで聞いたなあ、そんな性格。
と、わたしは隣に坐る人を振り返る。
「どーしてそこで、わたしを見るんですか」
と、デイジーちゃんは言う。
「ひとつのことに夢中になったら、その前に好きだったものなんて忘れます」
と、彼は言う。
いたよなあ、そんな人。
と、わたしは隣に坐る人を振り返る。
「どーしてそこで、わたしを見るんですか」
と、デイジーちゃんは言う。
彼の語る彼自身の性格やマイブームでは、わたしはデイジーちゃんを振り返りまくりでした。
「だから緑野さん、どーしてわたしを見るんですかっ」
だってさ、彼の言うこと、いちいちデイジーちゃんそのまんまなんだもん。
「そうですね、わたしと似てますね……って、そんなことないですよっ」
デイジーちゃんはいつでもまっしぐら。
うらやましいくらい、恋してる。
わたしはなあ、へんに理性が邪魔して、舞い上がるのがヘタなんだよなあ。つまんないよな、そーゆーの。
ああでも、ムラにいる間だけは、すべて忘れて夢の世界にいたいもんだ。
てことで、今だけ彼がマイダーリン。時間限定の夢。嘘の世界。本命様は今東宝で妹偏愛テロリストやってるけど(笑)、それも棚上げして、今は彼にどきどき(笑)。
とりあえず腕組ませてもらいましたが、身長は……公称170cm……うーん、そんなもんかなあ。詐称はしてなさそうだな。
とにかく愉快なにーちゃんで、好みの顔を間近で見られてしあわせでした。
男役だから三人称は「彼」だし、ねーちゃんではなく「にーちゃん」なのだ。嘘の世界は揺るがないのだ。たとえ彼がナチュラルに女言葉使ってたって、揺るぐことはないのだ(笑)。
わたしの頭には、自動変換装置がついているのだ。萌え。
さて、問題です。
あなたは生涯の伴侶になにを求めますか?
これだけははずせない、という「理想」を3つだけ答えてください。
2週間ぶりに会った第九トリオで、練習を早引きして入ったレストランにて、こんな話が出ました。
まー、よくある心理テストらしい。
出題者はあらっち。わたしときんどーさんは、笑いながらも考える。
3つ? 3つねえ。
わたしはとりあえず、「癒されること。ほっとできること」「外見」「話が合うこと」を上げた。
きんどーさんは「やさしいこと」「外見」「声」。ここで声が入るあたり、フェチねえ(笑)。
あらっちはなんと言ったかなー。忘れてしまった。
だがとにかく「金」と言うヤツはひとりもいなかった。みんなこのトシまで独身で、理想が高いのか低いのか。夢を見ているのか現実的なのか。まあ、このトシまで独身なら、金は自分で稼いでるだろうから相手に求めないのかな。
そこでさらに、問題です。
あなたが先ほど上げた「理想」まんまの人が「2人」現れました。2人の差異はまったくありません。
この同じ2人から、どちらかを選ぶ場合、「あとひとつ」なにがある方を選びますか。
はあ? わかりにくいなあ。
まったく同じ外見で、同じだけわたしと性格的にぴったり合っていて、一緒にいるとたのしくて話もはずみ、またほっとくつろげる人がふたりいるってこと?
ここでわたしの頭の中には、ケロちゃんの顔をした背の高い男性が浮かびます。寿美礼ちゃんの顔とどっちにするか悩んだけど、今日はケロちゃん誕生日だし(はっぴーばーすでー、だーりん)、と、よくわかんない理由で決定。いや、純粋に顔だけでいうなら、男の子の顔としては、寿美礼ちゃんの顔がめちゃくちゃ好きなんだが……(女の顔としてはべつに好みじゃないけど、男としたら好きさ)。他に具体的な好みの顔も浮かばないし、ケロでイメージトレーニング。
涼やかな笑顔を浮かべる、背の高いケロがふたり。どっちも「あいらびゅーん、こあら」と言っている。
多少、頭痛のする光景だが……まあ、それは置くとして。
このクローン人間ふたりのうち、どちらかを選ぶ場合、どういう付加価値があれば、どちらかに決めるかってことね?
「ちなみにあたしは、『家を建てられる人』って答えた」
と、あらっち。
おお、それはすばらしい答えだ。
「他にもいろいろ答える人がいたよ。ずはり『金』とか、『長男でないこと』とか、『笑いのツボ』とか」
なるほど、3つの理想を全部満たした上での「あとひとつ」なら、みんな現実的なことになりますなー。
「んー、なんていうか、すいよせられるっていうか、そばにいたらこう、すうっとわかるっていうか」
きんどーさんは、なにやらわけのわからないことを言っている。
きんどーさんの「あとひとつ」はかなり感覚的だ。
解答です。
問題の「3つの理想」はこの際関係ありません。
最後に加えた「あとひとつ」こそが、あなたが生涯の伴侶にほんとうの意味で求めていることなのです。
「これを言うとね、みんな大抵納得するよ」
と、あらっち。いろんな人に質問して回ったようだ。
「あたしの『家を建てられる人』っていうのは、建ててもらうんじゃなくて、あたしもずっと働いていくつもりだし、一緒に力を合わせて家をつくっていくって意味だから」
答えを聞いたとき、納得したんだって。
「そっかー、なるほどなー。そうだよね、わかる、うん。当たってるよ」
きんどーさんはひとりで納得している。どうにも感覚的だ。
さて、わたしの答えた「あとひとつ」は。
目の前には、ふたりの背の高いケロが「あらびゅーん、こあら」と言って微笑んでいる。
さあ、どちらのケロを選ぶ?
わたしが、理想の彼に求める「あとひとつ」。
それは、
「わたしを愛していること」
だった。
わたしのことを、より愛している方を選ぶ、と。
あら、まあああ。
答えを聞いてびっくり。
わたしが「生涯の伴侶に求めるモノ」は、
愛
だったのですわーっ。
ロマンチストぉぉおお!!
答えを聞いて、爆笑してしまいました。
求めるモノは、愛。
いいねえ、緑野こあら、愛を求める人、だよ。外聞が非常によろしい(笑)。
そして、一見美しい答えだが、その実利己的なことも、とてもツボに入った。
そう、「愛」といってもだね。
わたし「が」愛していること、ではなく、わたし「を」愛していること、なあたりが、べりぃなぁいす!!
そのきれいごとっぷりが、実にわたしらしいです。
さて、みなさんはいかがですか?
本日は宙組新人公演『白昼の稲妻』。
1日雨だったけど、ムラに着いたときは傘がいらないくらいの小降り。このままやむんだと期待したのに、結局夜まで降ってたねえ。
作品がカスな場合、新人公演はとてもつらい。
その公演は出演者の魅力と実力だけで持っているわけだから、それがつたなくなると、「見れたもんぢゃねえ(泣)」ということになる。
わたしが新公を好きな理由のひとつは、そこにもある。
本役以下の力しか持たない人が演じてなお、「物語」としてどう見えるか。
作品についてあーだこーだ考えるのが好きな理屈屋としては、はずせないわけだな。
『白昼の稲妻』は、作品としてのレベルはふつうだ。
破綻しているわけでもないし、センスが悪いわけでもない。
筋を追うだけを「物語」とするなら、なんの問題もない。
とゆーことを、再確認しました。
ただ。
問題は、オギーだ(笑)。
演出家荻田浩一氏の美意識は、本役の華と技術を想定して構成されているので、新公で再現するといわゆる「オギーらしい」部分に支障が発生(笑)。
はっきり言うなら、劇中劇『オセロー』。
えらいことになってました(笑)。
わたしはこの公演、1回しか観ていないし、金がないためあと1回行く予定だったのを断念したところなんで、もう観る機会はないんだが。
そのたった1回で、「納得」したクチなので、まさか新公で「?」になるとは思わなかった。
劇中劇『オセロー』。
それまでの柴田芝居をぶっとばし、オギー全開になるこのシーン。
いちばんの盛り上がり、クライマックスここにあり!のシーン。
ミステリ調にすすんできた芝居なだけに、探偵役が犯人を名指しするシーンはいちぱん重要、『水戸黄門』なら助さんが「ひかえ、ひかえ~い!」と叫ぶシーンだ。
ランブルーズの悪事を暴き、ヤツめを「ははぁ~~っ!」と平伏ささねばならん場面だ。
いちばんわかりやすく、快刀乱麻してしかるべき場面なんだ。
なのにオギーったら。
このいちばんのクライマックスを、いちばんわけわかんなくしちゃうんだもの(笑)。
それまでふつーに筋を追って観ていた後頭部を、ハンマーですかーんっと殴られた感じ。
うわっ、全部吹っ飛んだ。事件だとか、真相だとか、芝居で犯人を告発するだとか。
理屈が一掃され、そこにあるのはただただ、感性のみ。
この『オセロー』を「わからない。あの芝居のどこが告発になるの?」「原作とあてはめると変よね?」「台詞が聞こえないからわからない」とか言っている人たちは、たぶんハンマーの威力が小さかった人たちでしょう(笑)。
つーか、台詞はアレ、わざと聞こえないようにしてるんだよねえ?
言葉は「音」、ときおり耳に残る「単語」が余韻を落とす程度、「音楽」の一種。
わざと、それまでの「台詞」「筋書き」とは別の次元にしている。
確信犯。
ハンマーでぶん殴り、別次元へ強引にご招待。
わたしは単純なのか、ハンマー効果で一瞬にしてオギーワールドへ着地。
真っ白な頭になだれ込む、オギー尽くしに息も絶え絶え。
この「言葉」を脇役に押しやった構成には、憧れと嫉妬を感じるわ。文字書きには表現不可能なことをやりやがって。
理屈ではなく、感性だけで、理解する世界。
台詞を聞くことで理解しようとしてたりしたら、そりゃ取り残されるよー。
ちゃんと劇中劇が終わったあと、舞台上の観客が「ランブルーズって言ってましたわね」とわざわざ「台詞で」説明してくれてるじゃん。巨匠作品じゃあるまいし、劇中劇で言ったことを、わざわざもう一度台詞で言うのは、劇中劇の方は「聞き取れなくてもいい」ってことでしょう、ふつー。
いや実際、わたしはこのわざわざな台詞で、現実に戻ってきたよ。
ああそうそう、そーいやそんなことを言うための劇中劇だったっけ。
てな、とっても気持ちよくトリップさせてくれる、だけどとても心臓に悪いシーン。
オギーは客を消耗させるよなー。
さて、このシーンは、新公だとどうなる?
結果。
トリップできませんでした。
ハンマー、効果極少。
正気のままこのシーンを観ると、「えーらいこっちゃ」でした。
うわー、音楽すげえなあ、台詞すげえなあ、へー、ほー、ひゃー。
トリップできなかったいちばんの要因は、「歌」。
そうか、あのシーンには「ガイチの歌」が必要不可欠なんだ!!
ふつーの歌い手さんでも、苦しい。最低限ガイチのレベルが必要なんだ。
個人的に、ガイチはオギーワールドには合わない人だと思っている。だから本公演のこのシーンでも、ガイチはあまり目に入ってなかった。
しかし、彼の歌声は必須です! 思い知ったわ。
そして、センターに立つふたりの男女には、問答無用の「美しさ」が必要だということも、痛感した。
現実感のない、少女マンガのよーな美しさを持つふたり。彼らが愛憎に堕ちる姿が、これまたカタルシスなんだ。
たかちゃんの無機質な美しさが嫉妬に「汚れる」瞬間に、あの波は観客を飲み込んでしまうんだ。
そして、水くんとかなみちゃんは、合ってましたなー、オギーワールド。いちばん似つかわしかったのではないかと。
てなことを、咄嗟にいろいろ考えてしまうくらい、トリップしそこない、取り残されたわたし。
1度だけ観た本公演で「納得」していただけに、新公で観て「わけわかんねえ、このシーン」と思ってしまった……そうか、あの日トイレの行列で「わからないわー」「台詞聞こえないしー」とか言っていたおばさま方、こーゆー気持ちだったのねっ。
舞台では、若者たちが「必死で」オギーワールドと格闘している。
あー……そんなに青筋たてられてもなあ……技術的なこともそうだけど、なんかこう、チガウんだよなあ。
舞台が大騒ぎ、って感じだった。劇中劇『オセロー』。
あとの芝居の部分は、ふつうに「新人公演」だったよ。
『白昼の稲妻』、作品としてのレベルはふつー。
しかし……やっぱりオギーがオギーだったのは、マイナスなんじゃあ……?
いや、わたしは大好きだし、本公演の『オセロー』ならもう一度観たいと心から思うけど。
新公のレベルなら、もういいです……(笑)。
WHITEちゃんとふたり、
「わたしら、ヒゲフェチ?」
と、話し合っていた。
というのも、水しぇん@ランブルーズのヒゲ姿にきゃーきゃー言ったあとなのに、さらに今回、七帆ひかるくん@ランブルーズにきゃあきゃあ言ってるから(笑)。
「ヒゲか? ヒゲがいいのか、あたしら??」
「ああでも、あのヒゲがいいのよー、かっこいいよーっ」
「顎ヒゲがまた、いいのよねっ」
「そう、ヒゲは顎まであってこそよ!」
あとWHITEちゃんは早霧せいなちゃん@サバティエを気に入っていた模様。うむ、美人さんだったねえ。
さらに、やはり目について仕方なかった「暁郷」のことをたのしそーに語る。WHITEちゃん、君もうGOくんのファンなんじゃ……?
わたしはあと、和音ちゃん@ジルダがきれいでかわいくて、目が離せなかったよー。
凪七瑠海ちゃんもさすがにかわいいしねえ。その他の男の役でも、スタイルで目立ってるし。
しかし、身長170cmで「少年」役だもんなあ……おそるべし宙組巨人集団。
まあたかこもその昔雪組で、「丁稚少年」役をやってたけどな……(笑)。
今日はチェリさんちでケロ尽くし!!
チェリさんはわたしの、唯一無二のケロファン友だち。わたしにはいわゆる「ヅカ友」がいなくて、それまでの友だちをヅカに引きずり込んだんだよね。そのため全員、ひいきは別。それぞれ勝手に好きな人を応援している。
だから、同じ人を好きな友だちははじめてなの!
わーいわーいわーい。
「ケロちゃんのビデオを見ながら、おしゃべりしませんか? うちには猫もいますよ。それから、ごはんも食べていってくださいね」
……ケロと猫とごはん?! マジっすか?! それってもお、猫にマタタビ状態よ。緑野、気分は天国。
浮かれきってでかけました。
ふふふ。
くわしいことはないしょです。
ときおりわたしが「受が、攻が」ととばしすぎたことを口にすると、大人なチェリさんは「それはよくわからないですけど(笑)」とたしなめてくれます(笑)。
テレビの画面にはいつもケロちゃん、話題もケロちゃん、ごはんはおいしいし、チェリ・ジュニアもかわいいし……ハレルヤ。
猫は……猫も、かわいかったんですけど……。
おびえて、出てきませんでした。
1匹は布団の中に隠れて、出てこない。布団をめくって追いかけたけど、ダメ。最後は吠えられちゃった……くすん。
もう1匹はどこにいったのか、まったく影も形もない……と思ったら。
バスタブの中に隠れてました。
バスタブだとう?! 水が大嫌いなくせに、そんなところに隠れるくらい、わたしのことがキライなのっ?
「ねえ、写真撮ってもいい?」
バスタブの中の猫! かっ、かわいい!!(猫バカ)
「いいですよ! てゆーか、わたしも撮ろうっと」
チェリさん、ふたつ返事。(猫バカ)
そして、ふたりしてバスタブの中でおびえている猫を写真におさめました……ああ、かわいいっ。
きらわれててもいいんだ、猫は見ているだけで癒される。
とってもごきげんな1日。
チェリさん、お世話になりました! めちゃくつろがせていただきました。ああ、しあわせ。
チェリさんは、この日記を読んでメールをくれた人なの! こんな日記でも、書いていてよかったと実感。おかげでチェリさんと知り合えました。
ただ。
帰りの電車の、阪神ファンがこわかったっす……。
わたしらがケロ三昧してるうちに、阪神負けたのね。
「花バウ観たよ」
と、WHITEちゃんからの電話。
どうだった? と聞けば。
「矢吹翔様がかっこいいのっ。すごいのっ、素敵なのっ」
以下、数分間ちはる兄貴賛美がつづく。
兄貴がかっこいいのはわかったから、他の人はどうよ?
「ゆみこちゃん、うまかったよ。みつるくんかわいかった。そのかもかっこいい。ヒロインはまあかわいいんじゃない?」
他は?
「専科さんはやっぱりうまいよねえ。ああでもやっぱりすばらしいのは兄貴だわー。兄貴だけでごはん3杯は食べられるわ」
あのー。
それで、主役は……?
「あさこ? ………………まあ、よかったんじゃない?(棒読み)」
ヲイヲイ。言われるまで、忘れてたわね(笑)。
わたしの周囲では、天下一のあさこ様の評価がとても低いのだった(笑)。まあ、ひとの好みはそれぞれっすから。
WHITEちゃんの場合、どうも、あさちゃんが目に入ってこないらしい。『野風の笛』のときも、
「ゆみこちゃんと対で踊っている男役は誰だろう? 知らない人だニャ」
と思って眺めていて、あとから「そうか、あれがあさこだ!」と気づいたくらい、そもそも顔をおぼえられないらしい。
変だなあ、WHITEちゃん。一緒に『マノン』観に行ったじゃない! まああのときは、ふたりで壮くんの話ばっかしてたけど。
そーいやかねすきさんも、長い間あさこの顔がわからないって言ってたなあ。『マノン』のビデオ買ったくせにー(笑)。
わたし? わたしはもちろん、ばっちりおぼえていますよ。あのタータンに似た人でしょう?(笑)
『マノン』のころはそうは思わなかったけど、『カナリア』あたりから「美しいタータン」と呼んでいるわ。
と、前置きが長くなったが、よーやく観ました、天下一あさこ様主演『二都物語』。
東京の青年館まで遠征です。いや、ついでがあったもんでな。
感想。
うっきゃ~~っ、兄貴~~っ!!
ちはる兄貴素敵ーっ、かっこいいーっ、セクシーっ。
ぜえぜえ。
わたしも、WHITEちゃんと同じ感想になってしまうわ。
第一声は兄貴でしょう、やっぱ。
兄貴への賛美だけで数分は語ってしまうでしょう(笑)。
かっこよすぎだ、兄貴……めろめろ。
えーとストーリーは、なんか知らんがグレてる男シドニー@あさこが、とっても後ろ向きな恋をする。恋を成就しようなんてカケラも思わず、愛するルーシー@彩音ちゃんとその夫チャールズ@ゆみこの幸福だけを願うそうな。そしてその志通り、チャールズの身代わりに処刑されるのでした。
いちばんつらかったのは、ヒロイン・ルーシーの大根ぶり。
いくらなんでも、これはひどいんじゃないか?
女がドレスを着たお人形にしか見えないから、そんな女に恋する男ふたりがバカに見える。夫はまだ美しいお人形と一緒に暮らせるからいいけど、代わりに死ぬ男はほんとーにただのバカだ。
どうがんばっても、シドニーがルーシーを愛する理由が見えてこない。
外見? 美人だからそれでよし? でもそれじゃあ、あまりに浅はかだよなあ。男の価値を下げるだけだよ。
物語が壊れているのは、すべてヒロインに問題があるでしょう。
前提だもんなあ、シドニーがルーシーを愛する、ってのが。
演技力に問題のある若手を抜擢するなら、脚本でフォローすべきでしょう。まだほんとーに下級生だよね、彩音ちゃん。この子を使うなら、演出家が工夫してしかるべき。
何故ふたりの男が彼女を愛したのかを、エピソードで表現してくれ。
こんな出来事があったから、心が動いたのです。と。
それもなしに、台詞を言っているだけが精一杯のお人形を、命懸けで愛されても不気味だわ……。
ヒロインがあまりにお粗末だったので、彼女を愛することで回っていく心理劇がさっぱり理解不能だったのがつらいところ。
感情移入は無理っす。
第1幕のクライマックスらしい、シドニーとルーシーの会話のシーンはあまりに長くて睡魔に襲われたよ……。つらかった……。
あさこがかっこいいだけじゃ、間が持たないよー。泣。
主役はひたすらルーシーらぶ、なので、あまり魅力のある物語になってこない。
魅力を感じるのは、もうひとりの主役チャールズの貴族お家騒動側と、民衆だ!革命だ!側。
チャールズ主役でもよかったかもな……。そしたら、彼の身代わりに死ぬシドニーは「2番手ならではのオイシイ役」になったのに。
物語として「動き」があるのが、チャールズなんだよね。フランス革命にずっぽりかかわってますから。いろんな意味で。
一方シドニーは全部蚊帳の外。ルーシーを愛していることで、蚊帳の外側にかろうじてへばりついてるだけ。
やっぱ、物語を動かす人を主役にするべきだよなあ。
あさこ主演の舞台だから、ちゃんとシドニーを主役らしく演出してあるんだけど、どーにも弱い。
だって、「舞台として」「物語として」いちばん盛り上がる場面には、シドニーはまったく出てこないんだもの。関係ないから。
それって、どうよ?
なんか、ちがわない?
原作がこうだから、という話は無視。
舞台の上の話をしているのだから。
原作は小説という媒体だから、文字でいろいろ書き込むことができる。シドニーの鬱屈もいくらでも紙面を割けるでしょう。
しかし、これは舞台だ。「見せる」ことか前提だ。
そうする場合、より効果的に同じテーマと物語を表現するなら、別の手法があったんじゃないかと思うんだ。
チャールズ主役にしちゃえばよかったのに。もちろん、あさこ主演で。
そしたら、いくらでも盛り上がるシーンを主役中心に描けたのに。ヒロインとの恋愛も描けたのに。
シドニーに割く時間を減らして、チャールズ中心にしたら、もっとメリハリが利いたおもしろい舞台になったろうなあ。
出番が少なくてもシドニーはいい役だから、ゆみこがびしりと演じたら、とてもオイシイ役になったろうなあ。
なんともまあ、じれったい作品だ。
蚊帳の外で奮闘しているあさこ。
さすがにかっこいい。
だけど、繰り返すが、物語の中心にいないせいで、関係ないところでひとりでから回っている感が強い。
なまじかっこいいだけに、変な人にも見える。
彼が物語に絡むのは、2幕の後半になってからだ(じゃあ1幕と2幕の前半はなんだったの?!)。
処刑が決まったチャールズの身代わりになると決めたときの、たのしそうなこと。
そっかあ、たのしいのかあ。
たのしいだけじゃないのかもしれないが、音楽は明るくコミカルだし、あさこはきらきらしているし、観ながら「どーしたもんか」と首を傾げてしまったよ。
だってさ、シドニーってば、「愛する人の不幸を、待ってましたとばかりによろこんでいる」のよ。
そりゃたしかに、自分の命を投げ出して助けるんだけど……それは崇高な行いかもしれんけど……。
でもさ、よろこんじゃイカンだろ。
そもそもそんな不幸が、はじめからないのがいちばんいいんだから。
自分は身代わりで死ねてハッピーエンドだけど、そんなことをされたヒロインとその夫はどれだけの重荷を背負わされることか。
なまじその前の裁判シーンが「これぞクライマックス!!」てな盛り上がりを見せるだけに、その直後のシドニーの明るさが観ている側のテンションを下げるというか……。
裁判のテンションのまま、身代わり処刑まで持っていくことは不可能だったのか、太田先生?
それとも、あさこがきらきらしすぎるのが問題なのか? でもそれは、あさこが主役だって段階でわかりきっていたことだろうに。
シドニーはほとんどの場合「カートンさん」と名字で呼ばれるんだが、これがわたしには「カトーさん」って聞こえるんだよなー。
キザってて素敵だぞカトーさん。
なにを考えてんのかさっぱりわからないぞカトーさん。
でもかっこいいから許しちゃうかなカトーさん。
でもやっぱりタータンに似てるぞカトーさん。
てなもんだ。
ああしかし。
ちはる兄貴かっこいー……。
彼が壊れるのは、必然だと思う。
もともと、繊細な人だった。
それゆえに激しい人だった。
己れを見抜かれることを屈辱と感じ、決して誰にも心を開こうとはしなかった。
礼だとか謝罪だとかを口にする人ではなかった。
いつも尊大だった。傲慢だった。
変わりやすい気分は、不機嫌なときの方が多かった。
それでも、彼を愛する者たちが少なくないのは、彼に魅力があるからだろう。
野生の獣の激しさと気高さを持ち、どんな群にいても孤独をその眼に宿していた。
誰といても、癒されることのない飢えをかかえていた。
彼が激していないとき、彼の目を見てみるといい。
かなしい、瞳をしているから。
だから、彼が壊れるのは必然だと思う。
その男に会ったときに、彼は壊れた。
もちろんその男のことは知っていた。それまで何度も顔を合わせていたし、実際に戦いもした。
だが、彼が瞠目したときのその男は、あきらかにそれまでとは別人だった。
「この者たち、エチオピア人の解放を!」
男はそう言った。
「刃向かわない者たちには憎しみではなく、慈悲を」
男は、それまでの男とはちがっていた。その男が言うはずのないことを言っていた。
彼は、呆然と男を見ていた。
それまで男は彼にとって、祖国の敵であり、最愛の妹をたぶらかす憎しみの対象でしかなかった。
男個人がどんな人間であるかなど、考えることもなかったろう。
目には目を、殺されたら殺された分だけ殺し返す。
侵略と虐殺の歴史の中で、男が示したのはそのひとつ上をいく、新しい考え方だった。
器がちがった。
そう、彼は敗北したのだ。
戦争に敗れようと囚われようと、彼の心は決して敗北していなかった。
そんなものは表面的なことでしかない。
彼が「負けた」と思わない限り、彼は決して負けない。
そして彼は、精神の敗北を受け入れるくらいなら、その前に自害するか狂うかするだろう。敗北など、彼の自尊心が許さなかった。
だが彼はこのとき、男に敗北した。
彼を肉親以上には愛さなかった妹が、男に心からの愛を向けている。男もそれを受け入れている。
「この世に平和を!」
男と妹は、彼の手の届かない高みにいた。
彼は敗北した。
自分よりも、男のことをすばらしい人間だと思ってしまった。
他の誰が思っても、彼だけは思ってはならないことだったのに。
彼はそのとき無意識に、男を認めていた。
何故妹が男を愛したのかを、身を持って知ってしまった。
恋だといえば、恋かもしれない。
それほどの、熱を持った敗北だった。
だから彼は、壊れるしかなかった。
認めてはならない相手を、認めてしまったから。
敗北してしまったから。
彼は、破滅に向かって進む。
「昨日夢で、俺はお告げを聞いた。お前の清き行いは、神に許されている」
お前は正しい。……神の言葉にすがるほど彼は壊れ、男を陥れる自分を正当化する。
あの男に破滅を。
彼を壊したあの男に破滅を。
祖国の勝利も妹の幸福も、彼の頭にはない。
ただひたすら、妹へのゆがんだ愛と、男へのゆがんだ想いがあるだけ。
彼が壊れるのは、必然だと思う。
もともと、繊細な人だった。
それゆえに激しい人だった。
いつも、かなしい瞳をしていた。
俺は、彼の狂気についてゆく。
彼が建前とする祖国の勝利を唱えながら、ただ、彼と共に滅びようと思う。
彼の行くところが、俺の行くところだからだ。
彼の満たされない孤独な魂と共に彷徨うのが、俺ののぞみだから。
☆
東京まではるばる行った本命は、もちろん星組東宝『王家に捧ぐ歌』。
1階5列目20番台という、センターもばっちりだし、ウバルドにーちゃんもばっちり見える席だったので、幸福をかみしめてきましたー。
わーいわーいわーい。
ウバにーちゃんがどんどん行き過ぎちゃって、あっちこっちでべそかいてるのはみなさんご存じのことなので、もうおどろく気にもなれないんだが。
今回、目がいってしまったのが、しいちゃん。
1幕の最後、しいちゃん大泣きしてます。
はあ?
なんで泣くの、ケペル?
「慈悲を!」とラダメスに言われたとき、たとえばサウフェなんかは号泣してるよね。カマンテは屈辱!てなもんだし、ウバにーちゃんは呆然としている。
エチオピア人の、この反応はわかるのよ。
しかしケペル、あんたエジプト人の、しかも将校じゃん。あんなに苦労して手にした勝利なのに、それを台無しにしようとするラダメスに怒りを爆発させてしかるべきよね。
他のエジプトのみなさんは、激昂してる。「なにを言い出すんだラダメス!」てなもんで。アムネリス様も「あなたの心がわからない!」ってお怒りだし。
ふつーは理解できなくて、反発するよね。
たしかにケペルも、群衆と一緒になって反発しているのよ。
ただ、泣いているだけで。
そっか、ケペル……。
ラダメスが、自分の想像以外のことを口にしたのが、そんなにショックだったのか……。
勝利のために一緒に戦ってきたのに、心はひとつだと信じていたのに、ラダメスはそうじゃなかったんだ。
ラダメスに裏切られた、と思ったんだね。
でもそれ、泣くほどショックだったんかい。大の男が。
今までわたし、ラダメスのことをもっとも愛しているのは、アイーダでもアムネリスでもなく、ファラオだと思ってきたんだけど。
ケペルかもな……。
裏切られて泣いたくせに、ラダメスの求めた平和を受け入れているし。戦士の立場が軽んじられるようになった、と嘆きながらも。
そっか、裏切りも許しちゃうのね。愛ね。
そしてもちろん、許すに許せない最大の裏切り、ファラオ暗殺に荷担したことへの怒りと悲しみは、絶好調に激しいです。
泣きっぱなしだよ、ケペル……。たくましい体育会系大男が、わんわん泣いてるよ……。
なんつーかしいちゃん、やりすぎてないか?
もともと演技力はいまいちだし、そのぶんハートで暑苦しい演技をする人だったけど。
行き過ぎだろ、ソレ。ケペルの人物像が曲がってきてないか? ……わたしは大好きだけどな(笑)。
1幕の最後、ケペルとウバルドは「あんたらチューしてない?」ってくらい接近してストップモーションがかかるんだけど、あのときふたりとも泣いてるのかと思うと、なかなか感慨深いですなあ。
しかしこの舞台、みんなどこまでいくんだろう……。
熱いよ、熱すぎるよー。
ここまで作品にハマることができたのは、大劇作品では『凱旋門』以来だわ……。
どーもわたしは、平和うんぬんのテーマに弱いらしい。
携帯電話を落としました……。
落とした場所はわかってるの。だから心配はない。
落とした、と気付いた瞬間青ざめたのは。
待受画面、オサアサですがな……!
しかも、スワンレイクよ?! ちゅーしてんのよ?!
うっきゃ~~っ、恥ずかしい~~っ!!
朝9時になるのを待ちかねて営業所にTEL。思った通り、バスの中で落としていたらしい。JRバスの営業所に届いていた。
「営業所まで、取りに来ていただけますか?」
「はい、もちろん行きます」
「それじゃあ、ユニバーサルスタジオはご存じですよね? その駅の……」
「えっ、ちょっと待ってください。中津じゃないんですか?」
そう。実は、忘れ物するのはじめてではないのだ。
「前は中津でしたよね?」
「はい、移転しました」
なんてこったい。USJだと? 中津より遠いじゃないか。
わたしは仕方なく、ひとりでJRのユニバーサルシティ駅を目指した。
ぽつん。
気分は、ぽつん。
もっと時間を考えればよかった……。
なまじ、午前中だったりしたから。
USJに向かう電車は、たのしそーな人たちでいっぱい! これから遊びに行くんだーっ。たのしむぞーっ、おーっ!! てな雰囲気に充ち満ちている。
ガキどもはきゃーきゃー、カップルどもはいちゃいちゃ。
そんななかで、わたしはぽつん。
わたしがオサアサがチューしてる待受画面なんぞを使ってる女です、とこのツラ下げて携帯を受け取りに行くのよ。
わーん。
いや、あの営業所におやぢしかいないのは知っている。若い職員はまったくおらず、ごま塩アタマのおやぢばかりが働いているところだった。
だから、オサアサのチューを見ても、なんのことだかわからない可能性が高い。
ああだけど、わかるわからないは関係ないのよ、知らない人に見られるのが恥ずかしいのよーっ。
行楽客でいっぱいのユニバーサルシティ駅で降り、駅員というよりコンパニオン?てな制服のおねーさんに、地図をもらう。関連会社だから、専用の地図が用意されてるのね。
ふむふむ、この地図によると……。
USJの入口まで、行くんですか……。
行楽客と一緒。家族連れとカップルとグループと一緒。たのしそーな人たちと一緒。
つーか、ひとりで歩いてるの、あたしだけじゃん!!
この先にはUSJしかありませんよ、てなテーマパークの一部のような歩道橋を渡り、ゲートの前まで行く。
ここでよーやく、方向転換。下の道路に降りる。
ああ、孤独だったわ。たくさんの人のなか、わたしだけが孤独。
下を走るだだっ広い道路は……交通量が笑えるほど少なかったっす。
孤独です……誰もいない広すぎる道……孤独ですう。泣。
そして、歩いても歩いても目印が見えてこない。
変だな、ともらった地図の小さな注意書きを読むと。
「徒歩約15分」とあった。
15分?
15分てソレ、2km弱ってこと?
このなにもない寂しい道路を、えんえん15分も歩けと?
疲れた……。
とても疲れました。
帰りの電車はなかなか来ないし。
そうよね、今はUSJに向かう人たちでごった返している時間で、帰る奴なんてほとんどいないもんな。そんな無駄なタイムテーブル組んでないよな。
とりあえず無事に我が手に戻った携帯電話で、USJ専用車の恥ずかしいペイントを撮影してみました。何度見ても、趣味の悪い電車だわ(笑)。
それにしても、いったい何人のおやぢに見られたんだろう。
わたしのオサアサチュー。
ああ、ブルウ。
帰りの電車では、手持ち無沙汰なのでメールを打って時間をつぶしていたのだが。
そのときはっと気づいた。
営業所で携帯を受け取ったとき、小モニタに未読メールのマークがあったのでさっそく携帯本体を開いた。
すると、大モニタは「メール送信選択」画面だった。
あれ? 変だな? と思って確認したら、前日WHITEちゃんに宛てたメールが、送信できずにいたようだ。そーいや「送信中」のメッセージは見たけど、「送信完了」のメッセージを確認する前に、閉じてしまったっけ。電波状況がよくなかったかなんかで、送信できずに終わってたんだわ。
どーりで、WHITEちゃんから返事が来ないと思った。
今さら送るのもなんだから、昨日書いたメールは削除。
『矢吹翔様素敵っっ!!』
なんて内容、花青年館を出た直後だから書いて送る意味があるので、翌日に送るのはまぬけだー。
べつの友だちから届いていたメールを読み、それでそのことはもう忘れていたけど。
待てよ。
開いたとき、「メール送信選択」画面だったってことは……。
わたしが最後に携帯を操作したときのままの画面ってことよね。
JRの職員が、わざわざ落とし物の携帯電話をいじりまくってなにかしたとも思えないし。ふつーの乗り合いバスじゃなく、全席指定の夜行バスだから、携帯を見つけたのは他の客じゃなく、清掃の職員のはずだし。
つーことは、だ。
待受画面は、誰にも見られていない……!!
ああ。
九死に一生を得ました!!